連載|利回り重視シリーズ 第4回
アジアREITの分配金利回り比較|S-REIT・H-REIT・A-REITの選び方
利回り重視REITアジアインカム
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WealthAtlas 編集部国際投資リサーチチーム
公開:2026-03-25
最終更新:2026-04-12
読了:約10分
日本のJ-REITが平均利回り4.2%で推移する中、シンガポール(S-REIT)・香港(H-REIT)・オーストラリア(A-REIT)は5〜7%の分配金利回りを提示しています。通貨分散とアジア経済の成長を取り込む手段として、有力な選択肢です。
ただし、国ごとにポートフォリオの特性と税制が大きく異なります。本稿では2026年4月時点のアジア主要REIT市場を、日本人投資家の視点から整理します。
結論|狙うべき国
1
S-REIT(シンガポール)
平均利回り5.8%。海外不動産を広く組み入れる分散型REITが多く、SGDは比較的安定。法人税免除で実質利回り最大。
2
A-REIT(オーストラリア)
平均6.2%。物流・データセンターの比率が高く、先進国通貨AUDで受け取れる。
3
H-REIT(香港)
平均6.9%と最高水準。ただし中国本土の商業不動産比率が高く、スプレッドは地政学リスクを反映。
富裕層ポートフォリオではS-REITを軸に、A-REITで通貨分散、H-REITは小口でサテライトが標準的。分配金の再投資ルールは国ごとに異なるので要確認。
S-REIT(シンガポール)
S-REITはシンガポール取引所(SGX)上場の40銘柄超で構成され、時価総額は約1,000億SGD。ポートフォリオの特徴はクロスボーダー性で、運用資産の6割以上が海外不動産(日本・豪州・欧州)というREITも珍しくありません。
| 代表銘柄 | セクター | 分配金利回り | 資産の地理分散 |
|---|---|---|---|
| CapitaLand Ascendas REIT | 産業・物流 | 6.1% | SG/US/AU/UK |
| Mapletree Logistics Trust | 物流 | 6.5% | アジア太平洋全域 |
| Frasers Logistics & Commercial | 物流・商業 | 7.0% | AU/EU/UK/SG |
H-REIT(香港)
H-REIT市場は香港取引所に10銘柄前後が上場、時価総額は約1,500億HKD。商業不動産・ホテル・ショッピングモールが中心で、中国本土不動産への依存度が高い点は留意が必要です。
地政学的な不透明感から利回りは7%超の銘柄もありますが、スプレッドの拡大はリスクの織り込みと捉えるのが妥当です。
A-REIT(豪州)
A-REITは豪証券取引所(ASX)上場の40銘柄超で構成され、時価総額は約1,400億AUD。物流・データセンター・オフィスの比率が高く、先進国通貨AUDで分配金を受け取れるのが最大の魅力です。
| 代表銘柄 | セクター | 分配金利回り | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Goodman Group | 物流・データセンター | 4.2% | AI需要で成長期待 |
| Scentre Group | ショッピングセンター | 6.8% | 豪州・NZ主要モール運営 |
| Stockland | 住宅開発・商業 | 7.1% | 住宅不足を追い風に |
税制と購入チャネル
01
S-REITの源泉徴収
シンガポール非居住者への分配金は法人税免除扱いで、日本の総合課税・外国税額控除で二重課税を調整します。実質手取り利回りは約85%。
02
H-REITの税制
香港は個人受取の源泉税がゼロ。ただし中国本土資産からの配当には中国源泉税10%が適用される銘柄も。
03
A-REITの源泉徴収
豪州居住者以外は15〜30%の源泉税。ETF経由で購入すれば内部処理されるため手続きが簡素化されます。
04
購入チャネル
SBI・楽天・マネックスで個別銘柄を購入可能。主要証券会社はS-REIT・A-REITのETF(例:SGXリスト・ASXリスト)も取扱。
よくある質問(FAQ)
Q1.J-REITと比べて税制面で不利ではありませんか?
分配金の受取額ベースではS-REIT・A-REITは源泉徴収後でも5〜6%台と、J-REITの4.2%を上回るケースが多いです。手続きの煩雑さは外国税額控除で解消可能です。
Q2.通貨リスクが気になります。
SGD・AUDは先進国通貨で、JPY建て金利差に連動。長期では円安方向の構造要因が強く、通貨リスクは「分散の恩恵」と捉えるのが妥当です。
Q3.ETF・個別銘柄どちらがよいですか?
1,000万円未満ならETF(例:SGXリストのS-REIT ETF)で分散、2,000万円以上なら個別5〜10銘柄でセクター分散が推奨です。
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執筆 EDITORIAL TEAM
WealthAtlas 編集部
国際投資リサーチチーム
43カ国×21資産を横断調査するWealthAtlasの編集チーム。一次ソースに当たり、富裕層向けの海外投資情報を毎日更新しています。
出典・参考文献
- [1]Singapore Exchange(SGX)— S-REIT Monthly Review April 2026: https://www.sgx.com/research-education/market-updates
- [2]Hong Kong Exchanges(HKEX)— Market Statistics Monthly Report: https://www.hkex.com.hk/Market-Data/Statistics
- [3]Australian Securities Exchange(ASX)— S&P/ASX 200 A-REIT Index Factsheet: https://www.asx.com.au/markets/market-resources/sector-fact-sheets
- [4]Monetary Authority of Singapore(MAS)— REIT Regulatory Framework: https://www.mas.gov.sg
- [5]APREA (Asia Pacific Real Estate Association) — Asia Pacific REIT Survey 2026: https://aprea.asia
- [6]各REIT発行体のIR資料・目論見書(2026年3月時点)
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のREIT・ETFの購入を推奨するものではありません。記載の利回り・税制は2026年4月時点の参考値です。海外REIT投資には価格変動・為替・税務の各リスクが伴います。投資判断にあたっては最新の一次情報と専門家の助言をご確認ください。