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連載|マレーシア移住シリーズ 第3回

MM2H 4ティア徹底比較|Silver・Gold・Platinum・SEZの要件・費用・メリットを数値で整理

マレーシアMM2Hビザ移住2026年版
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WealthAtlas 編集部国際投資リサーチチーム
公開:2026-04-20
最終更新:2026-04-20
読了:約14分

MM2H(Malaysia My Second Home)は2024年7月にリニューアル運用が始まり、現行体系はSilver・Gold・Platinumの3ティアに、特別経済区向けのSEZ(Forest City限定)、そして別運用のSarawak S-MM2Hを加えた実質5つの選択肢になっています。

旧MM2H(2021年以前)との一番大きな違いは、定期預金のハードルが大幅に上がったこと、Platinumでは就労・事業活動が許可されたこと、そしてSEZルートが新設されたこと。本稿では、4ティア+S-MM2Hを「最低預金 / 不動産要件 / 滞在義務 / ビザ期間 / 家族帯同 / 更新条件」の6軸で比較し、日本人富裕層がどのティアを選ぶべきかの判断基準をまとめます。

結論|ティア選定の推奨順位

1
Silver(標準ルート)
定期預金 $150,000 + 不動産 RM60万。年間滞在義務90日で家族帯同可。日本人富裕層の大多数にとって要件・費用バランスが最良。
2
Platinum(就労・事業活動可)
マレーシアで事業を行う予定がある場合のみ。$1,000,000預金は重いが、20年ビザ + 就労許可 + 将来のPR申請で圧倒的に有利。
3
SEZ 50歳+(Forest City限定)
預金 $32,000 の最安ルート。ただし Forest City 内の物件に居住制限があり、流動性・出口戦略に難点。試験的移住には有効。
Gold ($500,000預金) は中間的選択肢だが、Silver との価格差 $350,000 に見合うメリットが「15年ビザ化」のみで、多くの日本人富裕層にとってはSilver で十分か、事業計画があるならPlatinum まで引き上げるかの二択が合理的。

MM2H 4ティアの全体像

2024年7月リニューアル以降の現行MM2Hは以下4ティア構成です。加えて、Sarawak州は独自ルールの S-MM2H を運用しており、実質的な第5の選択肢となっています。

ティア定期預金不動産購入ビザ期間参加費就労
Silver$150,000RM 60万以上5年更新RM 1,000不可
Gold$500,000RM 100万以上15年更新RM 3,000不可
Platinum$1,000,000RM 200万以上20年更新RM 200,000
SEZ (21-49歳)$65,000Forest City限定10年不可
SEZ (50歳+)$32,000Forest City限定10年不可
Sarawak S-MM2HRM 50万任意5年更新別途不可
USD $150,000 は 2026年4月時点のレート(1 USD ≒ 4.7 RM)で約RM 70万相当。Silver は預金 RM 70万 + 物件 RM 60万 = 合計RM 130万(約 4,400万円)の拘束がかかる構造。

Silver — 標準ルート

日本人富裕層が最初に検討すべき標準ルート。2021年以前の旧MM2H(定期預金 RM 15万 + 月収 RM 1万)と比較すると大幅に要件が上がっていますが、それでも他国の投資家ビザ(ポルトガルGolden Visa €50万、UAE Golden Visa AED 200万等)と比較すれば依然として最安水準です。

01

Silver 要件の詳細

定期預金 USD $150,000(約 RM 70万)をマレーシアの認可銀行(Maybank / CIMB / Public Bank / RHB 等)に預け入れ。ビザ承認後、最大50%を引き出し可能(不動産購入・教育・医療・国内観光目的限定)。不動産は RM 60万以上の物件を購入。滞在義務は 50歳未満で年間累計90日、50歳以上は義務なし。
02

向いている人

日本で退職済み or リモートワーク可能な事業オーナーで、家族で年間3〜6ヶ月をマレーシアで過ごしたい層。預金+物件で合計 RM 130万(約4,400万円)を5年ロックする覚悟があれば、このティアが最も合理的。
03

更新要件

5年ごとに更新。更新時は預金残高の維持が確認される。物件売却・預金引出しを行うとビザ取り消しのリスクがある点に注意。

Gold — 中堅層向け

定期預金 USD $500,000(約 RM 235万)と不動産 RM 100万以上が必要。ビザ期間は15年と長く、更新頻度は下がります。ただし、Silver との価格差 $350,000 の見返りが「15年化」だけでは弱く、多くの富裕層にとっては中途半端なティアに位置づけられます。

Gold を選ぶ合理的理由は「Silver の 5年更新が面倒」「預金枠を大きく持ってもリターンを取れる資金運用ができる(年利4%で RM 10万/年の利息)」という2点に絞られます。ただし外国人の定期預金利率は年3〜4%程度で、機会費用を考えると追加 $350,000 は現地投資(物件・株式)に回した方が効率的な場合も多い。

Platinum — 就労・事業可

Platinum は MM2H で唯一マレーシア国内での就労・事業活動が許可されるティア。20年ビザ + 不動産 RM 200万以上 + 定期預金 $1,000,000(約 RM 470万)という要件は重いが、マレーシアで事業を展開したい起業家・経営者にとっては事実上の「唯一の選択肢」になります。

01

参加費 RM 200,000 の意味

他ティアと比べて参加費が 200倍(RM 1,000 → RM 200,000)に跳ね上がるが、これは「就労ビザ + 長期居住権 + 将来のPR申請資格」の対価。Employment Pass(毎年更新)や Residence Pass-Talent(10年)と比較すると、Platinum の方が総額では優位になるケースも。
02

MTEP / Employment Pass との比較

スタートアップ経営者なら MTEP(Tech Entrepreneur Programme、5年ビザ、要件緩め)、一般企業の役員なら Employment Pass(要雇用主スポンサー)の方が初期コストは低い。ただし、両者とも「雇用形態」に依存するため、独立性を重視するなら Platinum が有利。
03

PR(永住権)への道

MM2H 単体から直接PRには進めないが、Platinum で20年滞在した実績は、別途申請するPR(10年居住要件)の審査において強力なプラスとなる。マレーシアPRは非常に取得難易度が高いが、Platinum 経由は事実上の「PR候補トラック」。

SEZ — Forest City限定

2024年に新設された特別経済区(SEZ)向けの MM2H ルート。対象地はJohor州の Forest City(シンガポール対岸の人工島開発エリア)。預金 $32,000〜$65,000 という他ティアと比較して破格の安さが魅力ですが、居住地が事実上 Forest City 内に限定されるという制約があります。

年齢区分定期預金不動産ビザ期間向いている人
21〜49歳$65,000Forest City物件10年試験移住・リモートワーカー
50歳以上$32,000Forest City物件10年リタイア移住・低コスト重視

Forest City の流動性リスク

よくある失敗パターン

Forest City は売れ残り物件が多く、二次流通の流動性が低い。RM 60万〜100万で購入した物件が、10年後に同価格で売却できる保証はない。

回避策

投資目的ではなく「居住目的」として10年以上使い切る覚悟で購入。売却前提なら、KL中心部(KLCC・Mont Kiara)のコンドミニアムで Silver 要件を満たす方が流動性が高い。

Sarawak S-MM2H — 別運用

Sarawak州(ボルネオ島北部)は連邦政府の MM2H とは別に、独自のSarawak-Malaysia My Second Home(S-MM2H)を運用しています。定期預金 RM 50万(約 $106,000)と MM2H Silver より低く、しかもドル建てではなくリンギット建てなので為替リスクが小さいのが特徴。

ただし、S-MM2H のビザは「Sarawak州内での居住」が前提で、KL や Penang に住む場合は別途許可が必要。Kuching(Sarawakの州都)は物価が安く治安も良好ですが、KL との利便性の差は大きいため、ボルネオ島に住むことを積極的に選ぶ層でなければメリットは限定的です。

新旧MM2Hの比較

旧MM2H(〜2021年)と現行MM2H(2024年〜)の比較表。要件は大幅に厳格化されました。

項目旧MM2H(〜2021)現行MM2H(2024〜)Silver変化
定期預金RM 15万(約 $32,000)USD $150,000(約 RM 70万)約 4.7倍
月収要件RM 1万/月撤廃緩和
不動産任意RM 60万以上必須新規義務化
滞在義務なし年90日(50歳未満)新規追加
ビザ期間10年更新5年更新短縮
旧MM2Hは「定期預金 RM 15万(約500万円)+ 月収証明」で取れるため、日本人リタイア層に爆発的人気でしたが、現行は総拘束額で約4,400万円(預金+物件)が必要となり、対象層が絞られました。

落とし穴5選

USD建て預金の為替リスク

よくある失敗パターン

Silver以上のティアは USD建て定期預金が必須。日本円から USD に替えた時点で為替リスクが発生し、更新時にドル高円安が進んでいると追加入金が必要になるケースも。

回避策

USD預金をドル建て収入(配当・海外不動産家賃)とマッチさせて通貨リスクを中立化。日本円のみで生活する層は、Sarawak S-MM2H(RM建て)も検討する。

物件購入時の外国人最低価格

よくある失敗パターン

州ごとに外国人向け最低購入価格が設定されており(例:KL RM 100万、Selangor RM 200万、Johor RM 100万)、MM2H の RM 60万物件要件を満たしていても、州の外国人最低価格を下回ると購入不可。

回避策

物件検討前に州政府の外国人最低価格規制を確認。Johor Bahru・Penang・Negeri Sembilan は RM 100万以下でも購入可能な州・物件タイプがあるため、優先検討。

預金の50%引き出し制限

よくある失敗パターン

承認後に預金の最大50%まで引き出せるのは「不動産・教育・医療・国内観光」目的のみ。生活費や事業資金としての引き出しは不可で、しかも引き出した分の残高維持義務は続く。

回避策

生活費は預金とは別に、月々の送金または現地口座(Wise・Revolut・Maybank普通預金)から捻出する前提で資金計画を組む。

Platinum参加費 RM 20万の返還不可

よくある失敗パターン

Platinum の参加費 RM 200,000(約680万円)は返還されない。途中でビザを返上しても戻ってこないため、20年間マレーシアに居住する覚悟がない場合は機会損失となる。

回避策

まず Silver で5年居住して適性を検証し、事業・資産運用の見通しが立った段階で Platinum にアップグレード申請するのが安全策。

MM2HはPRに直結しない

よくある失敗パターン

どのティアでも、MM2H 保有期間をそのままPR申請に振り替えることはできない。MM2Hを20年保有しても、PR審査では「別途10年継続居住」の実績が必要と解釈されるケースが多い。

回避策

PRを目指すなら、Platinum で就労許可を取得し、正規雇用・事業運営の実績を積む。実際のPR取得率は1%未満とされるため、PR前提の計画は避け、長期ビザの延長を軸に設計する。

よくある質問(FAQ)

Q1.Silver で申請し、後で Gold/Platinum にアップグレードできますか?
制度上は可能ですが、実務的にはアップグレード時に追加書類・再審査が必要で、結果的に新規申請と変わらない手間になります。最初から目標ティアで申請する方が合理的です。
Q2.家族は何歳まで同伴できますか?
配偶者、34歳未満の未婚の子、および本人・配偶者の両親(義両親含む)が同伴可能。子が35歳になった時点で独立してビザを取得し直す必要があります。
Q3.定期預金はどの銀行でも良いですか?
マレーシア中央銀行(BNM)認可のライセンス銀行に限定。主要行は Maybank / CIMB / Public Bank / RHB / Hong Leong 等。Wise や Revolut 等のフィンテック口座は対象外です。
Q4.SEZ から他の MM2H ティアに移行できますか?
SEZ は Forest City 居住を前提とする独立ルートで、Silver/Gold/Platinum への直接移行制度はありません。移行する場合は新規申請となり、SEZ 保有期間はリセットされます。
Q5.定期預金は日本の銀行を介して送金できますか?
はい。SMBC・みずほ・三菱UFJ の外貨送金で対応可能です。ただし、送金時の「目的」欄に「MM2H deposit」と明記する必要があり、金額が $150,000 以上の場合は日本側の税務申告(国外送金等調書)対象となります。
Q6.MM2H Silver と S-MM2H のどちらが安いですか?
S-MM2H(RM 50万 ≒ $106,000)の方が約30%安いですが、Sarawak州内居住が前提となるため KL/Penang 等での生活を希望する場合は Silver が現実的です。Sarawak 州内生活を積極的に選ぶならS-MM2H が合理的。
Q7.旧MM2H保有者(2021年以前取得)はどうなりますか?
旧MM2H保有者は既存条件のまま更新継続可能(既得権保護)。ただし、次回更新時に新ルール適用となる可能性が報じられており、2026年4月時点で政府からの正式な方針発表は出ていません。定期的な情報確認が必要です。
執筆 EDITORIAL TEAM
WealthAtlas 編集部
国際投資リサーチチーム

43カ国×21資産を横断調査するWealthAtlasの編集チーム。一次ソースに当たり、富裕層向けの海外投資情報を毎日更新しています。

出典・参考文献

  1. [1]MM2H公式: https://mm2h.com/
  2. [2]マレーシア観光芸術文化省(MOTAC): https://www.motac.gov.my/
  3. [3]Wise: MM2H requirements Malaysia(2026年4月アクセス)
  4. [4]Bank Negara Malaysia(中央銀行)非居住者規程
  5. [5]Sarawak S-MM2H 公式: https://smm2h.sarawak.gov.my/
  6. [6]在マレーシア日本国大使館 — ビザ・在留情報
  7. [7]編集部ヒアリング(MM2Hエージェント 3社 / 在KL日系法律事務所)
本記事は2026年4月時点の情報を基に作成しています。MM2H の各ティア要件・参加費・家族帯同条件は MOTAC の運用により変更される可能性があり、実際の申請前には公式サイトおよび認定エージェントでの最新情報確認が必須です。外国人向け物件最低価格は州ごとに異なるため、購入計画前に州政府規制も確認してください。本記事は情報提供を目的としており、特定のビザ取得・不動産購入を推奨するものではありません。