crypto-40
【2026年版】イスラエル・デジタルシェケル|Bank of Israel CBDC実証と中東ハイテク・暗号資産ハブ
BOIデジタルシェケル(DSHEK)パイロット、Fireblocks・StarkWare・Aptos Labs・Algorand等のスタートアップ生態系を整理。25%税制、TASE上場関連株、米国NASDAQ上場のイスラエル系銘柄まで網羅。
読み物パート|2026年4月、イスラエルが中東CBDC実証の最前線へ
イスラエルは、中東・北アフリカ(MENA)地域におけるハイテク・暗号資産ハブとして独特のポジションを築いている。テルアビブはニューヨーク・ロンドン・シンガポール・東京と並ぶ世界有数のスタートアップ集積地であり、サイバーセキュリティ、ブロックチェーン技術、AI開発において世界的な競争力を持つ。2026年4月時点で、イスラエル国内の暗号資産関連スタートアップは約350社、機関投資家による暗号資産配分は約US$2Bと推定されている。
イスラエルの規制環境は、(1)ISA(イスラエル証券庁)とIBA(イスラエル銀行協会)が暗号資産関連業者を監督、(2)2018年に「金融サービスプロバイダー」(FSP)制度を導入し、暗号資産取引業者にライセンス義務、(3)2022年に金融取引法を改正し、暗号資産を「金融商品」として明確に定義、(4)2024年Q3にステーブルコイン規制法案を国会通過、(5)2025年Q4にBOI(Bank of Israel、イスラエル銀行)のデジタルシェケル(DSHEK)CBDCパイロット拡大を実施、という流れで段階的に整備されている。
特に注目すべきはデジタルシェケルCBDCである。BOIは2021年3月にCBDC研究を開始し、(1)2022年Q4にプロトタイプ構築、(2)2023年Q3に小規模パイロット(20機関、限定取引額)、(3)2024年Q4に中規模パイロット(50機関、1ヶ月の限定取引)、(4)2025年Q4に大規模パイロット(100機関、3ヶ月の包括的決済実証)、と段階を踏んできた。2026年4月時点ではDSHEKは「ホールセール限定で本番運用開始可能性」のフェーズにあり、商業段階への移行可能性が議論されている。
DSHEKの設計思想は、(1)階層構造(BOI→商業銀行→消費者)、(2)プログラマブル・マネー(スマートコントラクト機能)、(3)プライバシー保護(オフライン取引機能)、(4)国際決済機能(将来的にProject mBridge、Project Agorá等への接続)、という4つの軸である。BOIは「CBDC技術の中立性」を強調し、商業銀行・暗号資産事業者・伝統金融との共存を前提とした設計を進めている。
イスラエルのもう一つの特色は、暗号資産関連スタートアップの密集である。Algorand(イスラエル発のレイヤー1ブロックチェーン)、Notabene(暗号資産トラベルルール対応の世界トップ・プロバイダー)、Aon Crypto(暗号資産保険の世界最大手)、Curve Finance(分散型ステーブルコイン交換、創業者がイスラエル系)、Aptos Labs(レイヤー1ブロックチェーン)、StarkWare(L2、ZK-Rollup技術リーダー、ImmutableX/PaykとPolygonの基盤技術)、Fireblocks(企業向けカストディの世界最大手)、等の重要プロジェクト・企業がイスラエル発祥である。
地政学的な不安定性(2023年10月のイスラエル・パレスチナ紛争、続くガザ・レバノン情勢悪化)は、イスラエル経済全体に影響を及ぼしているが、ハイテク・暗号資産産業は2025年中盤以降の停戦合意進展とともに再び成長軌道に乗り、2026年4月時点では(1)テルアビブ証券取引所(TASE)の年初来パフォーマンス+15%、(2)シェケル/USD為替の安定、(3)海外投資の再開、というポジティブな兆候が見られる。
日本居住者にとって、イスラエル市場は(1)Fireblocks、Notabene等の機関グレードクリプトサービス利用、(2)テルアビブ上場のクリプト関連企業株式投資(Algorand、StarkWare等の関連)、(3)シェケル/円のヘッジ・分散戦略、(4)中東地域のCBDC・ステーブルコイン規制動向のベンチマーク観察、という4つの観点で重要なテーマとなる。
データパート|主要指標の実数値
主要暗号資産・関連指標(2026年4月時点)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| BTC価格 | $72,500 |
| ETH価格 | $3,850 |
| SOL価格 | $180 |
| BNB価格 | $620 |
| XRP価格 | $0.62 |
| USDT価格 | $1.00 |
| USD/JPY | 152 |
| USD/ILS | 3.7 |
| ILS/JPY | 41 |
| BTC dominance | 約54% |
| 暗号資産時価総額合計 | 約$2.6T |
Bank of Israel デジタルシェケル(DSHEK)パイロット主要マイルストーン
| 時期 | フェーズ | 内容 |
|---|---|---|
| 2021年3月 | 研究開始 | CBDC技術検討委員会発足 |
| 2022年Q4 | プロトタイプ構築 | 商業銀行3行参加 |
| 2023年Q3 | 小規模パイロット | 20機関、限定取引額 |
| 2024年Q4 | 中規模パイロット | 50機関、1ヶ月限定 |
| 2025年Q4 | 大規模パイロット | 100機関、3ヶ月包括実証 |
| 2026年Q3予定 | ホールセール段階移行 | 商業展開可能性議論 |
| 2027年Q2予定 | リテール段階(慎重議論) | 消費者向け一般提供検討 |
イスラエル主要暗号資産スタートアップ(2026年4月時点)
| 企業 | 主要事業 | 創業 | 評価額(推定) |
|---|---|---|---|
| Fireblocks | 機関カストディ・MPC技術 | 2018年 | US$8B(IPO検討中) |
| StarkWare | L2、ZK-Rollup技術 | 2018年 | US$8B |
| Aptos Labs | L1ブロックチェーン | 2021年 | US$4B |
| Algorand | L1ブロックチェーン | 2017年 | US$2B(時価総額) |
| Notabene | トラベルルール対応 | 2020年 | US$300M |
| Aon Crypto | 暗号資産保険 | 2020年 | (上場、保険大手の子会社) |
| Curve Finance | 分散型ステーブル交換 | 2020年 | (DeFi、トークンCRV時価約US$500M) |
| Lightspark | Lightning Network決済 | 2022年 | US$500M |
イスラエル暗号資産規制の主要枠組み(2026年4月時点)
| 規制種別 | 内容 |
|---|---|
| FSPライセンス | 暗号資産取引業者に必要 |
| ISA監督 | 暗号資産関連投資ファンド・STO |
| IBA監督 | ステーブルコイン発行体・銀行系暗号資産事業 |
| BOIホールセールCBDC | DSHEK実証中、商業段階議論中 |
| 暗号資産税制(個人) | 25%キャピタルゲイン税(2026年4月時点) |
| 法人税 | 23% |
| トラベルルール | ILS3,000以上の取引で適用 |
| AML/CTF | FATF基準準拠 |
イスラエル機関投資家の暗号資産動向
| 機関 | 暗号資産配分 | 主要関心 |
|---|---|---|
| Migdal Insurance | 0.05% | BTC ETF、ステーブルコイン担保 |
| Phoenix Insurance | 0.08% | スポットBTC、トークン化資産 |
| Harel Insurance | 0.03% | 機関カストディ |
| Israel Discount Bank | 0.20%(資産運用部門) | プライベート暗号資産 |
| Bank Leumi | 0.10% | BTC ETF、機関暗号サービス |
| 平均推定 | 約0.08% | (低位だが拡大傾向) |
Fireblocks主要メトリクス
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 設立年 | 2018年 |
| 本拠地 | テルアビブ・ニューヨーク |
| カストディ資産残高 | US$2T以上(累計) |
| 主要顧客 | 銀行、ETF発行体、機関投資家、Coinbase Custody代替 |
| 月次トランザクション数 | 約1.5M |
| サポート資産種類 | 1,000以上の暗号資産+トークン化資産 |
イスラエル暗号資産税制(個人投資家、2026年4月時点)
| 課税方式 | 税率 |
|---|---|
| キャピタルゲイン税(個人) | 25%(暗号資産の場合) |
| 配当・利息 | 25〜30%(税源・期間による) |
| 法人キャピタルゲイン税 | 23% |
| 海外取引所利用 | 申告義務あり、租税条約適用可 |
| 株式型ETF | 25% |
| 暗号資産型ETF | 個別ガイダンスあり、25% |
比較・戦略パート|イスラエル市場へのアプローチ
アプローチ1: テルアビブ証券取引所(TASE)上場関連株への投資
TASE上場のクリプト関連企業として、(1)Bank Leumi(LUMI.TA、暗号資産事業)、(2)Israel Discount Bank(DSCT.TA、デジタル資産戦略)、(3)Algorand関連企業(各種)、(4)テルアビブのフィンテック関連株、を組み合わせる戦略である。Interactive Brokers経由で取得可能、配当利回り3〜5%、シェケル建てで分散効果あり。日本のNISA成長投資枠での取得可能性は、対応証券会社による(限定的)。
アプローチ2: Fireblocks等のIPO(検討中)・関連ETPへの投資
Fireblocksは2025〜2026年中にIPO(NASDAQまたはTASE)を検討中であり、上場後は機関暗号資産インフラ事業への直接的なエクスポージャー獲得手段となる。並行して、StarkWare、Aptos Labs等のレイヤー1・レイヤー2関連プロジェクトのトークン保有(Aptos: APT、Algorand: ALGO等)も投資対象である。これらは雑所得最大55%が適用される暗号資産扱いであるため、税効率は限定的だが、技術的成長余地は大きい。
アプローチ3: 米国・欧州上場のイスラエル系クリプト関連株
米国NASDAQ・NYSE上場の(1)CyberArk(CYBR、テルアビブ拠点のサイバーセキュリティ大手、暗号資産分野展開)、(2)Wix.com(WIX、ウェブ構築×ブロックチェーン)、(3)ZIM Integrated Shipping Services(ZIM、海運×トークン化船荷証券)、(4)Mobileye(MBLY、AI×自動車×ブロックチェーン)、(5)Check Point Software(CHKP、サイバーセキュリティ×Web3)、というテルアビブ拠点・米国上場の銘柄群は、日本のNISA成長投資枠で取得可能で、イスラエル経済全体の成長を取り込む手段となる。
日本居住者の実務|イスラエル市場との税制・実務関係
日本居住者がイスラエル暗号資産関連投資を行う場合、税制対応は以下のように整理される。(1)イスラエル非居住者扱い: イスラエル側源泉税は配当25%(日イ租税条約により10%まで軽減可能)、利息25%(同条約で10%軽減)、(2)日本所得税: 株式・ETFの譲渡所得は申告分離課税20.315%、暗号資産取引は雑所得最大55%、(3)海外口座保有: CRSによる情報交換、5,000万円超の海外金融資産は「国外財産調書」、3億円超は「財産債務調書」提出義務、というのが基本である。
実務的アクセス手段として、(1)Interactive Brokers経由のTASE/NASDAQ/NYSE上場商品取引、(2)NISA成長投資枠を活用したCheck Point、CyberArk、Mobileye等のイスラエル系米国上場銘柄、(3)Fireblocks等のIPO参加機会(2025〜2026年予定)、(4)機関投資家グレードのカストディ・サービス利用(Fireblocks、Komainu等)、というのが現実的選択肢である。
最新動向として、(1)BOIのデジタルシェケル商業段階移行可能性(2026年Q3〜)、(2)Fireblocks IPO(NASDAQまたはTASE、2025〜2026年予定)、(3)地政学情勢の安定化に伴う海外投資再開、(4)Project mBridgeへのイスラエル参加検討、という4つの動きが進行している。
まとめ
イスラエルは、中東・北アフリカ(MENA)地域におけるハイテク・暗号資産ハブとして独特の地位を築いた。Bank of Israelのデジタルシェケル(DSHEK)CBDC実証、Fireblocks・StarkWare・Aptos Labs等の世界クラスのスタートアップ、テルアビブ証券取引所(TASE)上場の関連企業、25%という比較的穏当なキャピタルゲイン税制、というデジタル資産エコシステムを擁している。
2026年下半期以降は、(1)BOIデジタルシェケルの商業段階移行、(2)Fireblocks IPO実現、(3)地政学的安定化に伴う海外投資再活性化、(4)Project mBridgeでのイスラエル参加、という4つの動きが進行する。
日本居住者にとっては、(1)NISA成長投資枠を活用したイスラエル系米国上場銘柄(CHKP、CYBR、MBLY等)の長期保有、(2)Fireblocks IPO等の参加機会、(3)Interactive Brokers経由のTASE上場関連株、(4)機関投資家グレードのクリプト・カストディサービス利用、を組み合わせることで、中東地域のデジタル資産市場の成長を取り込むことが可能である。
長期的には、(1)BOIデジタルシェケルがMENA域内の決済通貨基盤化、(2)テルアビブが「中東のフランクフルト・スイス」としての地位確立、(3)イスラエル系プロジェクト(Algorand、Aptos、Fireblocks等)のグローバル展開拡大、という3つの方向性が、イスラエル市場の真のポテンシャルを引き出す要素となる。
出典・参照
- Bank of Israel - Digital Shekel Pilot Reports (2026年4月)
- ISA(イスラエル証券庁) - Crypto Asset Service Provider Reports
- Fireblocks公式 - Carstody Volume Reports
- CoinGecko - Israel Crypto Ecosystem Data (coingecko.com)
- Bloomberg - "Israel's Digital Shekel Goes Live" (bloomberg.com 2026年3月)
- BIS - CBDC International Cooperation Reports